市場調査会社の業界団体である日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が、抗議状を協会サイトに公開した。やり玉に挙げたのは、非公正な「No.1調査」。「お客様満足度No.1」「施術件数No.1」など広告にはNo.1表記があふれているが、中には疑わしいものも。背後には、「No.1を取らせる」と営業をかける調査会社と安易に依頼する企業の存在がある。調査の信頼性を保つためにも是正が必要だ。

安易な「No.1」表示が命取りになるケースも(画像下/Shutterstock)
安易な「No.1」表示が命取りになるケースも(画像下/Shutterstock)

 「当協会は、『No.1を取得させる』という『結論先にありき』で『No.1調査』を請け負う事業者やこれらをあっせんする事業者に対して、厳重に抗議し、中立的立場で公正に『No.1調査』を行うべきことを要請します」――。

 2022年1月18日、日本マーケティング・リサーチ協会(JMRA)が「非公正な『No.1調査』への抗議状」(*1)と題する抗議文を公表した。JMRAは、マクロミルやインテージ、クロス・マーケティングをはじめとする100社超の市場調査会社、リサーチユーザー側の企業・団体も賛助法人として60社超が参画する1975年設立の業界団体だ。

日本マーケティング・リサーチ協会が抗議状を公表
日本マーケティング・リサーチ協会が抗議状を公表

 その協会が、「到底看過できない」と怒りの矛先を向けた「非公正な『No.1調査』」とはどのようなものか?

 「お客様満足度No.1」「サポート体制No.1」など、広告表示において他社商品・サービスよりも優れていることを訴求するために「No.1」を連呼するケースが多発している。これらが精緻なリサーチに基づいた結果であればよいのだが、およそ聞いたこともないような事業者が「おかげさまで3冠達成」などとNo.1をアピールしているケースが散見される。

 JMRA副会長の村上智人氏は、「協会非加盟の事業者で、『No.1を取らせる』といううたい文句で営業するケースが横行している。会員企業にも『No.1調査をいくらでやってくれるのか?』という問い合わせがここ最近、増えてきた」と抗議の背景について説明する。

 いいかげんな「No.1」訴求は今に始まった問題ではなく、広告表現に対する規制が全般的に緩かった時代はさらに多く見られた。当時は、No.1表示に対して「※当社調べ」などと注記していることが多く、2008年6月に公正取引委員会が「No.1表示が合理的な根拠に基づかず、事実と異なる場合には、景品表示法(景表法)上問題となる」と警告。「No.1表示の根拠となる調査の出典を具体的かつ明瞭に表示すること」と表示のガイドラインを示した。(*2)

 そうした経緯から今度は、“No.1を取らせてナンボ”の調査会社が現れ、顧客が希望する結果を恣意(しい)的につくり出す、正当な調査とは言い難い調査ビジネスがはびこるようになった。その手口は例えば以下のようなものがある。

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